納得しても動かない理由
― 非対称な意思決定構造
相手の頭の中には、この提案を社内で通すための段取りの地図があります。
- 誰に説明するのか
- どの順番で話を通すのか
- どこで承認が必要なのか
- どの部門が止める可能性があるのか
しかし実際には、提案は相手の理解のところではなく、その先の社内プロセスのどこかで止まっていることが多いのです。
企業では、担当者が内容を理解しただけでは決まりません。上司への説明、関係部門との調整、品質やコストの確認、場合によっては購買や経営層の了承が必要です。目の前の相手が納得したとしても、その後にいくつもの関門がある。これを前提に見ているだけでも、「どこで止まりそうか」の当たりはかなり変わります。
その会社が品質主導なのか、コスト主導なのか。現場の裁量が大きいのか、上位者の承認が強いのか。技術部門が主導権を持つのか、購買や事業部が強いのか。もし相手企業の組織構造をある程度知っていれば、「この案件は品質部門が重い」「最終的には部長判断だろう」といった見立てができます。
- 「品質部門が最近かなり厳しくて」
- 「この件、上にも説明しないといけなくて」
- 「コストの話になると購買が入ってくるんですよ」
こうした一言は、何気ないようでいて、意思決定の地図の一部を見せています。会議の前後の雑談、言い淀み、同じ質問の繰り返し、参加者の顔ぶれの変化。そうした断片を拾うことで、「この会社では、どこがボトルネックになるのか」が見えてきます。
納得した後に通るべき社内の道筋のどこかで詰まっているのです。
だから重要なのは、相手を説得しきることではありません。相手の頭の中にある意思決定の地図を想像し、どこが詰まりそうかを見立て、そのボトルネックを外すことです。
📌 この記事のまとめ
- 提案が止まっているのは「説明不足」ではなく、社内プロセスで詰まっていることが多い
- 相手の頭の中には「社内を通すための意思決定の地図」がある
- 一般的な意思決定の流れ・組織構造・雑談の断片の3つから地図を推測する
- ボトルネックを特定し、そこを外すことが行動変容への近道
- 重要なのは「説得しきること」ではなく「社内で動ける形に変えること」
目の前の相手の反応が良いのに提案が進まない場合は、社内プロセスで止まっている可能性が高いです。「社内で共有するのに、どういった資料があると助かりますか?」と聞いてみると、どこが詰まっているかが浮かび上がってくることがあります。相手の反応が悪い場合は、まだ理解・納得の段階に課題がある可能性が高いです。
完全に把握する必要はありません。「品質主導かコスト主導か」「現場の裁量が大きいか、上位者の承認が強いか」といった大まかな傾向を、過去の会話や業界知識から想像するだけでも、「どこがボトルネックになるか」の見立て精度はかなり変わります。雑談の中の一言も、大きなヒントになります。
ボトルネックとなっている部門や人物が「懸念していること」に応える情報を準備することです。品質部門が懸念するなら品質面のデータを、購買が関与するならコスト比較の資料を整えます。相手担当者が「上に話を通しやすくする」ための材料を一緒に考える姿勢が、信頼にもつながります。
ボトルネックをどう外すか ― 行動変容への具体的アプローチ

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