📘 技術交渉シリーズ|第11回
事前準備なしに理解は生まれない
「達成目標をロジックツリーで明確化し、共有する」
会議でうまく話すより、会議の前に「何を達成するか」を設計することの方が、ずっと大切です。
技術交渉では、会議の場でどう話すかに意識が向きがちです。どんな資料を出すか、どんな順番で説明するか、相手から何を聞かれそうか。
もちろん、それらは大切です。ただ、その前にやっておかなければならないことがあります。
「この会議で何を達成したいのか」を明確にすること。
ここが曖昧なまま会議に入ることが、意外と多い。
もちろん、それらは大切です。ただ、その前にやっておかなければならないことがあります。
「この会議で何を達成したいのか」を明確にすること。
ここが曖昧なまま会議に入ることが、意外と多い。
😓 よくある「会議が終わっても何も決まらない」パターン
一生懸命説明はしているのに、こんな経験はありませんか?
- きちんとしたデータは出している
- 技術の特徴もわかりやすく説明している
- 相手の質問にも誠実に答えている
なのに会議が終わってみると、「たくさん議論したけど、結論は次回に持ち越しだね」という状況になる。
原因は、会議の達成目的が設定されていないことにあります。「理解させること」がいつの間にか目的化してしまっている。しかし「理解してもらうこと」はプロセスであって、目的ではありません。
🏔️ 山の頂上を決めずに、麓のルートを歩き回っていないか
富士山を登るのにルートは複数ありますが、全ての道を行ったり来たりする必要はありません。頂上への最適ルートを選んで登ればいい。
しかし多くの技術交渉の会議では、麓のルートをさんざん歩き回って疲れることになります。「いろいろ話ができた」「情報交換できた」ではあっても、前に進んでいない。
どの道を行くかを決めるには、
まず「どの頂上を目指すか」を明確にしなければならない。
まず「どの頂上を目指すか」を明確にしなければならない。
✅ 「トップ事象」=会議ごとの頂上を決める
必要なのは、「この会議では最終的に何を成立させたいのか」を最初に置くことです。
📋 具体例:新しいベアリング技術を自動車メーカーに提案する場合
「とにかく新技術を説明しよう」「性能の良さを理解してもらおう」だけで済ませると、会議は広がりすぎます。達成したいことが定まっていないと、話は多いのに会議として弱くなります。
トップ事象(会議の頂上)の例:
- 「この技術が既存案の延長ではなく、検討に値する選択肢だと理解してもらう」
- 「次回、詳細評価の打ち合わせに進む土台を作る」
- 「相手の技術部門の中で、検討テーマとして正式に取り上げてもらう」
🌳 ロジックツリーで「何が抜けると理解が成立しないか」を見える化する
達成目的が決まったら、次に考えるのは「その目的を成立させるために、相手に何を理解してもらう必要があるか」です。ここで使えるのが、ロジックツリーの考え方です。
🌳 ロジックツリーの構造イメージ
ロジックツリーで必要な要素を分けることで、「何を話すべきか」だけでなく、「何が抜けると相手の理解が成立しないか」が見えてきます。
🔄 「情報の説明」と「理解のための説明」は全然違う
❌ やりがちなパターン
資料の1ページ目から順に説明する。開発の背景→試験結果→製法→将来展望。一応会議は成り立つが、こちらが持っている情報の説明になりやすい。
✅ 理解させるための説明
相手の頭の中に、こちらが意図した理解の構造を作ることが目的。そのために出す情報を選び、順番を整え、論理の抜けをなくしておく。
🤖 AIは補助として使えるが、核心は人が決める
🤖 AIが得意なこと
達成目的の言語化サポート/論点候補の洗い出し/説明の順番の整理/想定質問の生成ただし、一番大事な部分はAIでは決められない:
「我々はこの会議で何を成立させたいのか」という問いの答えです。ここが曖昧なままAIを使っても、資料が増えるだけで終わります。逆にここが明確なら、AIはかなり強い補助になります。
⚙️ 技術者こそ、交渉をもっと「設計」できる
技術者は、技術そのものを整理することには慣れています。原因を分ける、要素を分解する、機能のつながりを考える。本来、ロジックツリー的な考え方は技術者に相性がいいはずです。
交渉もまた、設計です。
何を達成したいかを決め、必要な要素を分け、
相手の理解が成立する形に組み立てる。
何を達成したいかを決め、必要な要素を分け、
相手の理解が成立する形に組み立てる。
理解は、その場の話術だけで生まれるものではありません。会議前の社内準備の中で、かなりの部分が決まっています。
📌 この記事のまとめ
- 会議の前に「この会議で何を達成したいのか(トップ事象)」を必ず決める
- 達成目的を起点に、ロジックツリーで「相手に何を理解してもらう必要があるか」を分解する
- 「情報の説明」ではなく「相手の頭の中に理解の構造を作る」ことを意識する
- AIは補助として活用できるが、目的の設定は人が行う
- 技術者の論理的思考力は、交渉の設計にも直接活かせる

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