技術者が世界で戦うために

 
『英語が話せること』に頼ると交渉に失敗します
必要なのは

「技術力」

「交渉力」

さらに+1UPのために

まずは技術的交渉の直接サポート
その先に、技術者として国際的に活動するために必要なスキルを獲得します

 

海外技術交渉の成功への道 – SPEDiのサポートで難題を乗り越える

(1) 交渉能力の重要性

日本人技術者が海外での業績を上げるためには、ある程度の英語力は必要ですが、それ以上に、コミュニケーションと交渉のスキルが必須です。

(2) 交渉の課題

海外企業との技術的議論、深夜・長時間の会議が当たりまえになっていないでしょうか? 解決のために海外出張による直接交渉が必要になることもあります。これは、開発費・人件費・出張費の増加、加えて技術者の不満、すなわち働き方満足度の低下の要因です。その影響は交渉そのものだけでなく多岐に渡ります。

(3) 海外企業との技術交渉の難しさ

海外市場への進出や契約締結は喜ばしいことです。しかしそれはゴールではありません。実際問題として、その後の実務にこそ、多くのチャレンジを要求されます。言葉の壁だけでなく、慣例や文化の違いによる議論のすれ違いが、技術・製造・品質の課題で起こります。これは多くの企業が共通して直面する困難であり、いかに効率よく乗り切るかは業績に直結する課題です。

 
▶︎ SPEDiのサポート

SPEDiは、貴社が技術開発とその進捗に専念できるよう、多言語・文化背景を考慮した交渉とコミュニケーションの戦略をサポートします。効果的な交渉戦略を構築することで、貴社の課題を解決します。

 

 

 

 

 

 

 

 

我々を取り巻く課題とは?

ー なぜ日本人の給料は上がらないのでしょうか? ー

 

 

 

 

 

** 日本の給与体系についての議論は、近年盛んになっています。多くの企業が従業員に対して十分な給与を支払っていないという懸念がありますが、この問題を深く掘り下げるためには、労働分配率という重要な概念を理解する必要があります。労働分配率は、企業が人件費にどれだけの割合を割いているかを示す指標ですが、この指標の計算方法は、人件費を付加価値で割ったものであり、付加価値とは売上から原価を引いたいわゆる粗利として良いでしょう。

分かりやすくシンプルにすれば、例えば、100万円で仕入れた商品を150万円で売れば、粗利は50万円です。この粗利から20万円を人件費に充てる場合、労働分配率は40%となります。労働分配率が高いほど、従業員の給料は向上します。政府は企業に対し、要は分配率を上げるよう促しており、給料を上げると補助金を提供する政策を打ち出しています。

しかし、日本の企業における労働分配率は他の先進国と比較しても決して低くはなく、これを過度に高めると将来の設備投資など他の重要な分野への資金配分が制限されます。従業員にとっても、長期的に見れば利益になりません

では、給料の低さをどう改善すれば良いのでしょうか? 人件費を増やすには、粗利を増やす必要があります。

つまり、売上を増やすか、原価を減らす必要があります。

しかし、原価削減は下請け業者等へのプレッシャーとなり、これが日本の低賃金の一因となっているため、このアプローチは限界があります。売上を増やす方法も、すでに多くの企業が試行錯誤しています。

では、何が給料が低い原因で、何をどう変えれば良いのでしょうか?

ここで重要になるのが「労働生産性」の概念です。労働生産性は、「付加価値、すなわち粗利」を「労働投入量」で割ったものです。労働投入量を変えずに粗利を増やすためには、労働生産性を上げれば良いことになります。

計算式上は労働投入量を増やすことでも粗利は上がりますが、結局給料として出ていってしまうので営業利益はさがります。したがって、粗利を増やすための唯一の方法は、労働生産性を高めることです。

日本企業は、戦後のブルーカラー分野での現場改革に成功してきましたが、ホワイトカラー分野では労働生産性の向上にあまり注力してこなかったのが実情です。IT化やアウトソーシングを進めることで労働生産性を高めるとはよく言われることです。

しかしこれに加えて、企業間コミュニケーションに使われている時間はどれほどでしょうか?

特にこれからは海外の企業と仕事は避けて通れません。

このプロセスの非効率性によるロスは、ホワイトカラーの生産性を著しく下げています。

コミュニケーションの無駄を排除することで、例えば英語や交渉が苦手な多くの技術者においても、本来の技術業務に集中することができます。

日本の企業が労働生産性を向上させることによってのみ、従業員の給料を健全に上げることができます。

これは企業の持続的な成長につながる重要なステップと言えるでしょう。


   [ 公益財団法人 日本生産性本部 資料より抜粋 ]

 

ー グローバル時代の技術者に求められる英語力とその真の価値 ー

 

**現代の国際的なビジネス環境において、英語力は単なる言語の習得を超えた、重要な戦略的スキルとなっています。特に技術者にとって、英語は単にコミュニケーションの手段ではなく、グローバルな影響力をもたらす重要なツールです。

しばしば、英語能力がキャリアアップやリーダーシップの取得に役立っていると見られがちです。技術よりも英語が得意な人がより重要な役割を担う場面が散見されることは否定しません。重要なのは「技術」でありその知識や経験であることは言うまでもありませんが、同時に、英語力を磨いた同僚の努力は敬意に値するものです。ただしそれは努力の差ではなく、個性の差であり、どの部分を伸ばしてきたかが現象として現れているにすぎません。とはいえ、英語を話せない技術者がグローバルなビジネス環境で低く見られてしまうのも残酷な事実です。しかし、特に技術者にとって、英語が流暢であることは必ずしも必要でないということは、私の経験からお伝えしたいことの一つです。むしろ内容の伝え方、その準備が、より重要なのです。

かつては、日本の企業や技術が世界をリードしていました。 しかし、今日ではグローバルな競争の中で相対的にその影響力が減少しています。「日本の企業」であるということだけで耳を傾けてくれる人は世界で激減しています。この状況の変化は、「個人の発信力をより重要」なものとし、英語で伝えられないことが、例えれば「国内ビジネスでコミュニケーション能力に欠ける」ことと同じくらいの障害になっていることを意味します。

流暢な英語がビジネスの成功と必ずしも等しいわけではありません。ネイティブのように話すことは必要ありません。重要なことは、自分の考えを明確に伝え、相手の意見を傾聴し理解する力です。技術者の方であれば、技術力と経験を相手に伝えることさえできれば、それ以外は無視できる枝葉に過ぎません。

 例えば、私の元同僚のドイツ人技術者は流暢ではない英語を話しますが、技術的知識と経験に裏打ちされた彼の辿々しい英語での発言はグローバルの会議で常に注目されます。英米から参加するネイティブたちが、時々質問を織り交ぜながら、10分、20分の間、シーンと聞き入っているのです。技術者としての深い知識が、言語の不利を帳消しにした極端な例ですが、要はこうなれば良いのです。

ただ、普通は、「技術力はあるが「超」がつくほどではないし、語学学習はどうにも苦手で続かない」と自覚している人は、私もそですが、多いのではないでしょうか。そんな中、英語が上達する同僚に引け目を感じてしまう。しかし見方を変えてください。英語が上手いかどうかは単に個性の違いであり、ビジネスマンとしての能力の差異ではありません。先ほどのドイツ人技術者は、技術力90%、英語力10%だったかもしれませんが、要は総合力で伸ばすことを目指すべきです。技術力を磨くことは大事ですし、また、英語が得意かどうかにしても、戦略的交渉術に則っていなければ伝わらず、流暢だが意味のない発言になってしまいます。それも含めて「英語力=伝える力」なのです。グローバルなビジネスや技術の世界であなたの存在感を高めるためには、技術力と戦略的交渉の基本、そして身の丈にあった英語力の総合的な力が重要になります。すでに来ているグローバルな世界で技術者として生き残るためには総合力を磨くことが重要になります。

 

日本 87位 「低い英語能力」

EF EPI より
EF 英語能力指数
世界113か国・地域の英語能力ランキング

 

ー 本当に大事なことだけに時間を使う ー

マーケティング用語でパレートの法則というものがあります。

「2:8の法則」とも呼ばれますが、これは「 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげている」という法則のことを言います。

「パレートの法則」は、経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱され、「全体の大部分(8割)は一部分(2割)から生み出されている」という内容で、「20:80の法則」とも呼ばれる学説です。経済や組織構成など、さまざまな状況に当てはまると言われています。

これは経験的に仕事にも当てはまると思いますが、あなたの実感はいかがでしょうか?

社内外の会議、メール、連絡事項の伝達、営業職でも技術職でも、コミュニケーションに使う時間が仕事のほとんどではないでしょうか。特にチームをマネージメントするような立場になれば、組織の大きさの分だけコミュニケーションコストは増えます。

そして、その全てに全力で対応していては、時間はいくらあっても足りません。

コミュニケーションにおいても、「全体の2割」が利益の大半を生むことに貢献する、と考えれば、そこに重点をおくべきでしょう。

さらに、コミュニケーションの中でも特に「交渉」においては、「準備が全てである」ということを、あらゆる交渉戦略の専門家が本などに書いています。すなわち、準備が十分でない時の交渉は、結局は望まない結果を招くことになります。

つまり、仕事全体を見回して、「本当に価値のあるコミュニケーションや交渉」だけに十分な準備を行なって臨むことが、利益につながる結果を最大化することに他なりません。

そして、その準備にははっきりとした「手順」があります。

それを理解し、体に入れることは、交渉に手練な人の技術に素早く追いつくことを可能にします。

背中を見て学ぶこともあると思いますが、その背景に知識を持っているといないとでは、能力の進捗には大きな違いがあります。これまで暗黙知でしかなかったことも、今はその基礎を学ぶことができます。

 

解説本

解説 技術者のグローバル交渉術」 (2023年7月25日より発売中)

 

 

[ 著者 ]  SPEDi 株式会社 代表取締役 久保 聰 

「略歴」  

           機械工学専攻 及び MBA修了 

      「日系及び外資系企業で、社内外の海外人材、および海外企業との技術交渉を担当」

     石川島播磨重工業(現IHI), ボルグワーナー(米), コンチネンタル(独), フォルシア(現FORVIA)(仏)

 

 

 

 

—「技術者のグローバル交渉術」抜粋 —
 「インドとのコミュニケーション」

インドのビジネスマン・技術者と議論の経験のある方はお分かりだと思いますが、インドの方はとに

かくよく喋ります。語数が多く、とにかく早口です。それゆえ、まず言葉を聞き取ることが最初のハー

ドルと言って良いでしょう。また、ただ早いだけではなく、発音にも独特のクセがあります。基本はイ

ギリス英語ですが、単語一つをとっても、発音を省略する母音があったりするので、単語自体が捉えら

れない時もあります。加えて自己主張がとても強い。自分の考えをなかなか曲げようとしない。おそら

く交渉をする時、最難関な人たちだと感じます。

私の経験を少しお話しします。

<中略>

.. 企業文化・社会的背景の違いを顕著に示した別の事例をお話しします。これは、日々の実務で、
開発の進捗に問題が出たケースです。

今度は日本の自動車メーカーに納める製品をインド工場で製造することになった別のケースです。
先行開発は日本で担当しましたが、生産段階に近づくと、自動車メーカーとインド工場の間に立って
技術的なコミュニケーションを日本の拠点である我々が仲介しました。

日系自動車メーカーの開発手法として特徴的なのは、製品の強度や性能を評価する際、実験で得られた
データだけでは不十分で、むしろその結果に対する理論的裏付けがより重視されます。
部品毎・材料毎の基礎データを用いて計算やシミュレーションを行い、実験結果を理屈で説明できることが重要です。

たとえばJISのような標準規格に合致した材料を用いた試作品が実験に合格した場合、海外企業でありがちなのは、
その規格内で製造された部品が実験に合格すれば、それ以上深い議論になることはまずありません。
それで問題なしと判断されます。

これはこれで考え方ですが、日本企業の考え方は、標準規格内で材料強度のばらつきはある。

実験は 必ずしも強度下限品で行われたものではないから、実験結果をベースに、強度下限でもその製品が、特定の温度・応力条件で規定寿命(例えば 万 走行)でも損傷せず機能を維持することを論理的に証明しなければなりません。

<中略>

海外の技術者が辟易するこの日本のプロセスを、自動車産業の日が浅いインドの技術者に実施させるのは容易ではありません。

具体的には、自動車メーカーからの質問・要求が毎週複数個届きますが、内容によっては簡単に答え られるものとは限りません。
ものによっては、その質問に答えるために追加で実験データを揃え、シミュ レーションを並行して、できる限り早く回答しなければまた次の質問が寄せられ、それが遅れれば 自動車メーカー内部の開発プロセスそのものを止めてしまう可能性もあります。

そういった自動車メーカーからの要求をインド側に伝え、回答期限について交渉する、これが毎週繰り返されます。
毎週課題の刈り取りと、新しい宿題内容の議論とその期限の約束を取り付けることがルーチンワークになります。

あるケースでは、いくつかの検査データを統計的に処理してレポートにする必要がありましたが、
その期限をインド側と交渉しコミットさせます。

最初の会議で、インド側と課題やそれぞれに対するアクション、およびそれぞれの期限を合意しまし

た。次の会議を翌週に設定し、そこで刈り取りを行い、自動車メーカーに提出する予定でした。

1週間が経ち、第二回の会議では、進捗状況を確認し、データの内容を検証していくことになってい

ました。しかし最初の議題を振った時、インド側の回答は意外なものでした。

「それはどういった話か?」
日本側は一瞬沈黙してしまいました。おそらくよく聞き取れなかったか、勘違いをしているのだろう、
と再度説明をするも、インド側の反応は同じでした。

日本側は何から説明して良いやら、戸惑ってしまいましたが、先週の資料を引っ張り出し「先週話したのは次の通りで…」
と言って先週の内容を繰り返しました。
インド側から出席しているメンバーは先週とほぼ同じでしたから、引き継ぎができていないと言うことではありません。

ややあって、彼らは思い出し

「了解した、それは1週間程度で回答可能だ」と言います。

いやいや、先週の会議で、1週間で出来 ることを約束して今日があるのではないか。
アクションリストにもしっかり書いてある。インド側は「状況は理解した。しかしデータは1週間待ってくれ」という。

さらに問題だったのは、同じことが複数の項目に対して起こったことでした。

その日に刈り取れるはずだった複数の項目について、全て同じ状況にあり、それ以外の課題については期限が数日先であったために、結局その日の会議での収穫はゼロでした。

会議の後、呆然とし落胆しつつも気を取り直し、今回はしつこく確認したので、次の会議でのインド側のアウトプットに期待しました。

第3回の会議では、顧客提示した提出期限を数日後に控えていたので、これ以上は遅れられない状況にありました。

しかしご想像の通り、前週の会議と同じことがまた起きてしまったのです。

この1週間、メールで何度か確認を入れたのですが

「今やっている。次の会議で話そう」という反応 でしたから、まさか同じ状況にはならないと高を括っていたのですが、予想は完全に覆されてしまいました。

できそうもないなら事前に連絡をくれるなり、会議の再設定を提案するなりしてくれても良いはずだ、
こちらは自動車メーカーとの調整もある、と期待を裏切られたことにがっかりしていました。
仕方なく、 ではいつまでにデータがまとまるのか、そう聞いたところインド側で何やら長々と議論をしている。期限を過ぎているのだから、出来ていない事がわかっているなら、いつまでにできるかくらいは事前に検討し、すぐに答えられる状態にしておくのが普通だろう、と思うのですが、そのような常識が通用しま せんでした…

<続く>